働きアリのうちのベテランの1匹が、新居のほうを歩いていました。ここまではよくあることでした。
しかし、この日の歩き方はいつもと違い、石膏の端から端まで歩くばかりか、スポンジや天井にまで上って360度くまなく歩き回りました。
そしていつもの巣に戻った後に、不思議な行動をとったのであります。
仲間の働きアリに向かい合い、自分の上半身を上下に激しく5〜6回揺さぶりました。ミツバチがミツのある場所を仲間に教えるのと同じように、この時の働きアリは何かを伝えていました。
数分後、1匹また1匹と新居のほうに入っていきます。そして、あたりを歩き回ったあとにいつもの巣に戻ります。
その後に巣の引越しは始まりました。突破口は幼虫をくわえた働きアリでした。
幼虫を新居のスポンジのそばに移動させた働きアリ。右の個体は、このあたりもいいぞとばかりに模索しています。決断済みの個体は、急いで巣に戻ります。
マユを運び出す働きアリ。粘着力で孵化直後の幼虫や卵も数個くっついています。
仲間の働きアリを運んできた個体。相手のあごのあたりをくわえて抱っこの姿勢で運んでいました。運ばれるほうは、脚をたたんで体を丸めて無抵抗です。
幼虫の真横まで運んでいたので、恐らく育児係の若い個体が運ばれたのだと思います。
卵や幼虫やマユがほぼ全部運ばれたあと、女王アリがビニールチューブの中を移動し始めました。
そして誰もいなくなった今までの巣。久しぶりにふたを取りました。左下の円内が居住区でした。
石膏が何か所か変色していますが、不思議と匂いはまったくありませんでした。
居住区だった場所のアップ。
女王アリは産卵前にここをさらに掘り下げました。石膏に刻まれた線の1本1本が、女王アリの削った跡になります。
この場所で8匹の働きアリが生まれ、卵や幼虫が育ちました。尊い場所なのであります。
引越し完了後の新居の全景。
今のところは一か所に集まっていますが、今後4つの居住区をどのように使い分けていくのかが観察の見どころになります。
定番通り、女王の部屋・幼虫の部屋・マユの部屋などのように分かれてくれればおもしろいなと思う次第。
何場面か動画を撮ってみました。働きアリが働きアリを運ぶシーンや女王アリがチューブの中を移動するシーンなどを見ることができます。