2011年07月16日
あるカエルの物語

小雨降る中、会社を出て数キロ先の家に到着。ドアを開けて降り、ドアを閉めてふと前を見ると、車のルーフに直角三角形の黒い影。急いでカメラを取出し、撮ったのが上の写真です。
気付いた時にはルーフのど真ん中で前を向いていたのですが、カメラを向けたら反対側のほうに少しずつ歩いて行きました。

たまたま車のルーフにいたせいで数キロ先までワープしてしまったカエル、しかしもしも自分の意志でここまでの経過を計算済みだとしたら…

そんな物語を少しだけ。


僕のお母さんはここで生活してた。冬眠したのもここだったさ。
僕の遺伝子の中にはお母さんの記憶が入っているから、お母さんの見てきたことは全部わかってる。丸くて四角い光るものを近づけてくる人間がいることも知ってた。
この前、その丸くて四角い光るものを僕は見たんだ。それはお母さんの記憶と同じものだった。
ちょっとまぶしかったけど、僕はお母さんの前にいた人間と会うことができたんだ。
でも、その人間は大きなものの中に入ってどこかに行ってしまった。明るくなると、大きなものと一緒にまたここにやってきた。
僕は、その人間がどこに行って来たか知りたくなったんだ。お母さんが生活していたここも、生まれた場所からは遠い場所。この人間にとって遠い場所ってどういう場所なんだろう、そう思ったんだ。
僕は大きなものの上に上がって動き出すのを待った。ずっとずっと待って、暗くなって雨も降ってきて、その人間はやってきた。
この前のように大きなものの中に入り、そして僕とともに動き出した。
初めて感じる振動、初めて見る流れる景色、吹きっぱなしの風、あっちこっちに引っ張られる力、僕は人間にとっての遠い場所に行くために、必死にしがみついた。
どれくらいしがみついていたんだろう。振動が止まり、景色が止まり、風がやみ、力もやんだ。
そして人間がまた姿を現し、まぶしい光を何回かぼくに向けたあとに消えていった。
ここが人間の遠い場所なんだ。僕はとうとうやってきたんだ。
お母さんにとっての遠い場所、人間にとっての遠い場所、その意味は僕にはまだわからないけど、僕はこの遠い場所ってとこで生きようと思うんだ。
お母さんの記憶の中の人間はいい人だった。でも全部がそうでないことも古い遺伝子の中に書いてある。
人間は他の生き物のことを頭が悪いって思ってるけど、そうでないことにいまだに気づかない人間のほうが、ずっとずっと頭が悪いと思う。声を聞いた時に声で返事をしなければ頭が悪いってことにされるみたいだ。声しかたよりにできないなんて、そっちのほうがずっとおかしいのに。
僕はここにやってきた。遠い場所にやってきた。不安は無いよ。わくわくさえしてる。
お母さん、僕はここで新しいカエルになるよ。
posted by ぁぃ♂ | 岩手 ☔ | Comment(18) | カエル | 更新情報をチェックする
ページトップへ戻る