大きく育ってマユを作った1匹の幼虫でしたが、そのマユが小さな白い塊になっていました。
働きアリがマユの皮を剥ぎとり、中身の体液を吸い取っています。
その行為が行われている最中、他の働きアリたちはその現場に近寄ろうとしません。特別なことが起こっていることを知ってのことだと思います。
少しずつ小さくなるサナギ。もしかしたら、皮の中ではまだ幼虫だったのかもしれません。
マユの皮の一部が落ちていました。皮を切り取るように剥いたようです。
ずっと近くをうろうろしていた別の働きアリが、残り少なくなった体液を吸っています。このあと、白い塊は消滅しました。
さて、どうしてこのようなことが起こったのでしょう。メープルシロップも水も十分あげていました。たまにコバエも入れたりしていました。食べ物は常にあった環境でした。
推測1 サナギが自分で死んだ
サナギの死を知った働きアリが、食糧として摂取した。
推測2 事故でサナギが傷ついた
働きアリの事故的な扱いでサナギが傷つき、体液が漏れた。生存をあきらめて食糧として摂取した。
推測3 ストレスで狂乱した
何らかの外的要因がストレスになって、思わぬ行動に出た。
働きアリの食べ物は純粋な糖分であり、動物性の蛋白質は不要なはずです。他に成長中の幼虫がいる場合は幼虫に与えるために糖分以外のえさも摂取しますが、このときは食べられたサナギしかいませんでした。
今まで育ててきた幼虫を食べてしまうことは、幼虫の数が徐々に減っていくことから気付いていました。しかし、最後の幼虫がこのようなことになり、クローズアップされた形で飛び込んできたせいで、さすがに動揺を隠せません。残酷だとかかわいそうだとか悲しいとかではなく、理解はしているが受け入れられないという葛藤でしょうか。
いずれにしろ、このコロニーから次世代の1匹は消えました。アリの社会のことですので干渉はしませんが、高度な知能を持った昆虫がしたことですので、アリにとってはこれが最善の方法だったのだと思うしかありません。共食いはいろいろな生き物の中で何度も目にしてきましたが、今回の共食いはそれは生態なんだという一言ではかたずけられない何かを感じました。
同じ共食いでも、比較的低知能な生き物と高知能な生き物では、そこにある意味が少し違うのではないかなとも思います。無条件に食べてしまうことと条件があるから食べてしまうことの違いのようなものです。
違う言い方をすれば、本能で食べてしまうことと知能を持って食べてしまうことです。
アリの場合、特に今回の場合は後者だろうとは思いますが、どのように知能を働かせた結果なのか、それはわかりません。しかし、ここでアリに対して馬鹿野郎と思うのは理性のある人間のすることではありません。基本的に尊重する、しかし今回は理解不能、それでも信じて尊重する、そんな理性ある思考で理解しようと思います。
タイトルで事件と書きましたが、アリにとっては極めて日常的なことだったのかもしれません。