オトシブミのゆりかごづくりの季節になりました。ツツジの木にはたくさんのゆりかごがぶら下がっています。中には切り落とされて葉の上に落ちているものもあります。
ぶらさがっているゆりかご。いつ見てもその完成度には感心します。
こっちには2個。落ちたものとぶら下がっているもの全部で十数個ありました。
巻き巻きの側面も相変わらずな職人ぶり。ていねいに織り込みながら巻いているので、ほどけることがありません。これ、たぶん人間にはできないワザです。
巻き巻き途中の状態の葉っぱを発見しました。葉っぱの表側が内側になるように真ん中から折り、その後に巻き巻きが始まります。側面の織り込みも、この時に同時進行します。
もしかしたら、選んだ葉っぱが大きすぎて巻き巻きできなくなって放置されている状態かもしれません。
これは、ゆりかごを切り落とした後に残った葉っぱ。落ちたゆりかごが、奥のほうにぼんやり写っています。
わざと落としたのかかじりすぎて落ちてしまったのかは不明ですが、全体的には7割ぐらいは落とさずにぶら下がっていました。
成虫と幼虫の食樹は同じなので、羽化後の成虫がすぐに食事をするのには、ぶら下がっていたほうが都合がよいような気もします。
糸や粘液を使って葉っぱを丸めて簡易的な部屋を作り、その中を巣にしたり産卵場所にする昆虫は多くいます。しかし、オトシブミは葉っぱの弾性をうまく断ち切りながら糸も粘液も使わないで巻きこんでいきます。側面の織り込み効果で巻きが戻らないようにもなっており、葉脈の1点だけを噛み切らずに残してぶら下げるとなると、もはやそのすごさに笑ってしまいます。
巻かれた葉っぱの奥に眠るのは、オトシブミが産んだ1個の卵。ゆりかごの中で孵化した幼虫は、ゆりかごを内側から少しずつ食べて大きくなります。そしてそのまま中でサナギになって成虫になります。
成虫になったオトシブミは、内側からゆりかごに穴を開けて、外に出てきます。
外に出ようとするころにはゆりかごもパリパリに乾燥して茶色になっていることが多いですが、出てくる穴は意外ときれいな円形です。突き破って出てくるのかなと思ったら、ちゃんとかじって出てくるようです。
オトシブミが特異な体型をしているのは、穴から出てきやすくするためなのか、葉っぱを精巧に噛み切るためなのか、はたまた両方なのか、謎は多いのであります。