エンマコオロギの飼育ケースに、産卵床を投入しました。
十数分後、まずは湿った土の匂いを嗅ぎつけたオスが集まってきます。
そして例のごとくけんか開始。
噛みあうレベルの激しいけんかになりました。
けんかが一段落したころ、よっこらせとメスがやってきました。
5〜6分土を調査したあと、産卵管を突き刺して産卵が始まりました。
続いて2匹目のメスもやってきて、産卵管を刺し始めました。一番初めにやってきたメスが右端、まさに産卵中です。その左奥のメスが産卵管を刺し始めた2匹目のメスです。
産卵前には、メスが産卵場所の土を確かめるような行動がよく観察されます。今回もアゴの周りの触角を何度も土にくっつけたり土を噛んだりするようすが見られました。そして、産卵床の中を数周していったん出ていきます。1分もしないうちにまた戻ってきて、その直後から産卵が始まりました。
不思議なことに、この行動は2匹目のメスでもまったく同じで、もしかしたら産卵前のメス特有の一定の行動パターンかもしれません。
オスの行動ですが、一番最初にやってきて盛んに鳴き始めました。「いい産み場所があったぞ」かもしれませんし、「メスが好みそうな場所で鳴けば交尾率も高まるもんだ」かもしれません。
しかし、その後の行動ではメスが近づいても交尾に誘うような動きを見せません。腹の先をひくひくもさせず、メスの体の下に潜ることもせず、ただただメスを注視しながら鳴き続けます。
だとすれば、やはり産卵場所をメスに教えるために盛んに鳴いたのかもしれません。
似たような行動は鳥などにも見られ、オスが巣を作ってそこにメスを呼び込むのはペンギンなどで有名です。
産卵のような重要な場面で、オスがメスをサポートするような行動を見せるのは、なかなか興味深い現象です。比較的高度な知能を持つ鳥類だけでなく、エンマコオロギのような昆虫にもこのような生態があるのは、正直驚きなわけです。
『何驚いてんの?今ごろ気付いたの?』