竹の棒に黒いハチが止まっていました。触角の中間部と腹部の先が白くなっているというわけで、マツムラトガリヒメバチというヒメバチのようです。腹部の先には産卵管も見えます。
上から見るとこんな体型。
竹の棒に逆さまに止まりながら、触角を曲げて竹を探っています。このハチは寄生バチなので、主に他のハチの幼虫に寄生する習性があります。
竹の棒の穴の中に巣を作ってそこに産卵するハチがいますが、その幼虫に寄生するわけです。
触角を曲げて竹を探っているのは、その幼虫の位置を探る動作ということになります。このハチの触角は、竹の中の幼虫を探し出すというとんでもない高性能な触角なわけです。
幼虫の正確な位置を探し出し、体を上下一回転させて産卵管を突き刺しました。腹部と胸部の境界のあたりが極端に細長くなっているのは、このような姿勢をとりやすくするためかもしれません。上に90度曲げ、さらに下に180度曲げています。その際の折り重なり部分が細長くなっている部分になっています。
これからおもしろいことになりますので、産卵管の位置に注目なわけです。
産卵管の付け根のあたりが、バナナの皮をむくように剥がれてきました。
産卵管は産卵鞘というもので包まれており、さっきのバナナの皮にあたるのが産卵鞘です。
産卵鞘が産卵管から完全に離れました。産卵管は竹に刺さったままです。
ちょっとわかりにくいですが、産卵鞘は腹部の先についていますが、産卵管は腹部の中間あたりから出ていることがわかります。
産卵が済んだのか、また通常の体形になりました。
産卵鞘の役割は何なのか。ここからは妄想になりますが、刺す定位置まで産卵管を導いているようなことをしているのかもしれません。
例えば、長くて硬い産卵管を直角近くまで曲げるために、そのつけ根に膨大な筋肉をつけるのは効率的にどうかと思います。それよりも、腕のようなもの(産卵鞘)がよっこらしょと引っ張っていってくれれば、産卵管は硬さだけに特化して進化できます。また、腕のようなもの(産卵鞘)は硬くなる必要はないので、そこに敏感なセンサーを組み込むことも可能かもしれません。これが可能になれば、さっき触角で探り当てた場所にセンサーを使って正確に産卵管を誘導できるかもしれません。
触角で探り当てた位置を産卵鞘がいかに見つけるかですが、例えば探り当てた位置に口から分泌物を出してマークをつけ、そのマークの匂いを産卵鞘が見つけるという変則ワザをしてしまうかも。
人間が正座でしびれをきらして足の感覚が無くなったときに、すぐに靴を履かなければならないとします。その時に、手で足をつかんで靴まで持って行くはずですが、この動作と同じなのかもしれないと思うわけです。違うかもしれませんがw
産卵鞘に敏感なセンサーがあるかどうかですが、コオロギなどは腹部の先に風を感じる簡易触角のようなヒゲを持っていますので、産卵鞘が高性能であっても不思議ではないと思います。
仮にそのようなセンサーが無いときは、触角で探り当てた位置を移動歩数や体の回転角などで物理的に確定しているのかもしれません。
ところで、この竹の棒の中に何がいるのかですが、前にこんな記事を書きました。
その時はツツジの木の支柱の竹ですが、今回もツツジの木の支柱です。ただ、記憶が定かでないので全く同じ場所かどうかは断言できません。しかし、かなり気になるので明日撮影場所に行って確かめる予定です。
もしドンピシャ同じであれば、まさにビンゴ。マツムラトガリヒメバチは確かに幼虫の位置を探り当て、そこに産卵していたということになります。
つか、いくら硬い産卵管とはいえ、同じく硬い竹の棒に刺さるのが正直信じられませんが、枯れた竹の棒は思ったほど硬くないのかもしれません。繊維質になることによって、かえって隙間だらけになっているのかも。
また、セミやカメムシや蚊のように、昆虫が針状のものを何かに刺したくなったときはとんでもない強度や技術をもって刺してしまいます。コオロギも自然界では硬い地面に産卵管を刺して産卵します。枯れた竹の棒は、マツムラトガリヒメバチにとっては硬質スポンジ程度のものかもしれません。
それにしても、産卵のために頑丈な竹を見つけ出すハチがいたり、その頑丈な竹の外から針を刺して寄生してしまうハチがいたり、昆虫の生態というものは非常に摩訶不思議で興味深いわけです。