単独で1匹ずつ飼っているオオカマキリですが、2匹にひとつの飼育ケースに移動してもらって交尾をさせることにしました。
まず、メスがオスに気づきました。
下にいるメスが、上にいるオスをじっと見ています。
このとき、メスの腹部の先がひくひく動き出しました。普段は見られない動きです。
ここでメスが、おもしろい行動をとります。
自らオスの視野に入るように移動し、うしろを向いて羽根を少し広げて腹部の先をひくひくさせます。
何かフェロモンのようなものを出しているのでしょうか。
それとも、ひくひくした動きをオスに見せているのでしょうか。
いずれにしても、オスを誘っているとしか思えない行動です。
ここで、オスがメスを凝視するようになります。
メスがオスを誘い込むようにゆっくりと歩き出し、それに合わせてオスもゆっくりあとを追います。
上の写真の位置まで来て、両者が動かなくなりました。
メスの腹部の先のひくひくはますます激しくなり、オスも近くまで触角を寄せます。
30分ほど動きを止めた両者でしたが、ここでメスが動き出します。
またゆっくりと前に進みだし、オスは交尾のモードに入ったかのようにメスの動きを凝視します。
メスがケース内を半周したところで、大きな動きがありました。
オスが突然ジャンプして、メスに乗りかかりました。
ここでのメスの動きがおもしろく、逃げるように抵抗はしているのですが、なんだか本気の動きではありません。
弱くて逃げるふりをしているような動きです。
オスを攻撃しようとはせず、ひたすら手足をバタバタさせるメス。
この間、オスはメスの背中で前後に2回方向転換をしました。
腹側はこっちで間違いないか、位置はどのへんか、相手は発情しているか、いろいろなことを確認しているようでした。
いよいよ交尾のときがやってきました。体勢は側位です。
オスはメスの体にしっかりとカマを廻し、頭を下げます。
そして体をねじらせ、結合部を探します。
メスの抵抗はポーズだけで、もはや演技の域です。
ねじられたオスの腹部の先から、生殖器と思われる緑色の物体が出てきました。
そしてそれがメスの腹部に入っています。
上に乗っているオスの腹部の先が上を向き、それが180°近くもねじられてこの体勢を作っています。
緑色という点に気色悪さを感じるかもしれませんが、この色が本来のカマキリの体の内部の色だと思います。
よく見ると、茶色い表面から緑色の内部が透けて見えたりしています。
もはやメスは抵抗しなくなりました。
この姿勢のままピクリともせず、おそらく自分が仕組んだ交尾が終わるのを待っていると思われます。
オスの動いているところは、腹部の先だけです。
2匹はこのままの状態で交尾を続け、4時間ほど経ってからオスがジャンプしてメスを離れ、交尾が終わりました。
カマキリの交尾と言えば、メスがオスを食べてしまう話をよく聞きます。
今回の交尾の前に、メスにはイエコオロギをたらふく食べさせて満腹状態になってもらいました。
そのせいか、交尾前や交尾中の共食いは発生しませんでした。
しかし油断は大敵です。
メスを離れたオスは、そわそわ落ち着かない様子。
食べられるのを知ってか知らずか、メスから早く離れたいようです。
そんなわけで、またそれぞれの住み家に戻ってもらいました。
透明なケースの壁ごしに、オスを名残惜しそうに見つめるメス。
やはり食べたかったかどうかはわかりませんが、さっきの交尾の相手だということは、気づいたように思えました。
交尾直後のメスの腹部の先です。
先が開いたままになっていますが、時間とともに閉じるのでしょうか。
4時間近くも結合したままだったということで、いやはや本当にお疲れ様でした。
今回オオカマキリの交尾を詳しく紹介したのは、昆虫の交尾とはいえ、いろいろな感情や想いやかけひきが存在することを知ってほしかったからです。
以前に別のサイトでカブトムシの交尾を詳しく書いたことがありますが、交尾前にオスがいろいろな声を出してメスを数時間かけて口説くんです。
口説いて交尾を終えたカブトムシのオスは、その後もメスを守るようにそばを離れませんでした。
昆虫は思うほど下等な生き物ではありません。
見れば見るほど、その知能の高さに気づきます。
もっともっとそれを見たいと思うので、飼育がやめられないわけです。
追伸
メスの腹部の先は、元通りにきれいに閉じました(^O^)